クリスマス前のこと
板谷みきょう

ケンタッキー・フライド・チキンの
パーティーバーレルを
一度だけ買ったことがある

当時、随分と年上のキャバ嬢と
知り合いになって
嬢の勤めているススキノの店
10分900円のセクシーキャバクラに来て
指名して欲しいと頼まれたのだ

お金は心配要らないとは言われたが
イザ行くとなると
不安は大きくなるばかりだった

唄いに行った帰りの路上で
裸にされて
店外に放り出された酔客を
何度も
見たことがあったものだから

大きな覚悟で初めて入った薄暗い店内は
レーザーライトに照らされ
ミラーボールの光が散らばる中で
男女が蠢く様な
大音響の音楽が流れた淫靡な場所

応対してくれたボーイに
キャバ嬢の指名をする
そして
水着のようなコスチュームに
スカーフを付けたキャバ嬢登場
ソフトドリンクを飲んで
過ごしたりした

料金はいつもキャバ嬢が
内緒で全部
支払ってくれていた

その内
17時にウエシマで待ち合わせして
出勤の時に同伴で行って
閉店まで過ごすようになり
店のキャバ嬢達にも
「○○ちゃんのボーヤ」と呼ばれ
随分と
可愛がって貰ったりもしたものだ

階上喫茶のウエシマは
出勤前のキャバ嬢が
普通の女から風俗嬢へ変身する所
出勤前のキャバ嬢達は
心底優しかった


ケンタッキー・フライド・チキンの
パーティーバーレルを
一度だけ買ったことがある


自由詩 クリスマス前のこと Copyright 板谷みきょう 2013-11-02 06:32:01
notebook Home 戻る