墓参りー千の風にならない人たちへ
……とある蛙

もう十三回忌も過ぎたから
お参りする人もいないだろうと
連休を利用して彼岸でもないのに
墓参り

もう親戚も知人もいない
自分の出身高校だけある
両親の骨が埋まっている
団地のひとやま裏の
寺の墓地へ墓参り


蝮が団地造成で
大量移住した
そんなこんなの菩提寺の
うら寂しい造成墓地の一区画に
ちょっとジメジメ墓参り

女房と花と線香と
忘れちゃならない水桶と
竹箒を肩に担いで
斜面を登る墓参り

女房は花を替えたのだが、
どうにも花が寝てしまい
少し茎を折ってはみたが
どうにも据わりが悪いので
さらにどんどん短くし
花片が花立から幾つも出ている
ちょっと不気味なかっこ悪さ
はっと気づいた女房は
右側の花立に石を一つ沈ませて
すらりと花を立ち上げた
一つ賢くなったと女房が笑う
凸凹両脇の花立 墓参り

一生懸命枯葉を掃いていて
墓石の周りも掃いたので
大量の玉砂利を掃き出して
あわてて砂利だけ手で掬い
苦笑いしながら元に戻す
どうにも締まらない掃除の墓参り

ついでに墓石も磨かねばと
オケから柄杓で水かけて
っと女房に言う
巻石の外から水が飛んできて
墓石の近くの自分が濡れ鼠
鼻水をすすり始めた墓参り

線香をとりあえず上げようと
一束火を付けたら大火災
いつまで経っても炎が消えず
吹いてはいけないと誰かに聞いたので
一束ぐるぐる振り回していたら
烽火(のろし)のようになってしまい
それでも何とか線香を立て
大量のケムリとともに
咽せながら拝んだ墓参り


ーもう何年になったかも
パッとは思い出せないよ お袋
いつの間にか死んでしまって
その後六年後に親父も死んで
今は仲良くあの世に行って何してる

俺はどうにもこうにもやりきれなくて
それでも何とか生きている
親孝行は出来ないもので
気づいたときは墓の下

線香の煙が目にしみる

「千の風になって」
なんて知ったことか 洒落臭い

俺には慣れない墓参り
これからも気がついたら
生きている限りするよ

この墓には入らないだろうけどさ


自由詩 墓参りー千の風にならない人たちへ Copyright ……とある蛙 2013-10-31 18:52:26
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