ふるさと
月形半分子

埃の舞うホームに定期券ひとつポケットにいれて
私はいつもの電車を待っている

人の波は駅のホームに溢れては
電車に吸い込まれ、またホームへと溢れ出る
そうして流されては繰り返されていく
誰もが帰り人であることの世情

乗り換えの案内板に
故郷行きの時刻表が見える
春夏秋冬と通りすぎてきたのは
故郷へむかうホーム

あの人は故郷行きに乗る帰り人かも知れないと
今日も私は、労働者風の旅人を振り返り見る

故郷の駅舎では
誰かがあなたを待っていますか
幼い頃、誰もが父を迎えに走った、秋の七草枯れた小道を
迎え人は今でもかけて来ますか

今夜もいつもの電車に乗る
車窓の向こうではよそよそしさと懐かしさを滲ませて家並みに明かりが燈る

帰り人からはぐれたものが乗る最終では
淋しさだけが乗り合わせる
あの人は今頃帰りついているだろうか
迎え人のもとへ


あした、故郷へ帰る人はいますか





自由詩 ふるさと Copyright 月形半分子 2013-10-30 01:22:39
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