夢の隣
月形半分子

ある夏の暮れ、一匹の虫が空を見ていました。それは万華鏡をかざし見たような小さな空でした。その空から、突然雪でも雨でもないものが降ってきたのです。それは風船でした。24色の大小様々な丸い風船はクレヨンが降ってくるようでもありました。空に24色の雲が峰のように湧き、涼しい風が吹きはじめたと思ったら、ふわりふわりと風に舞いながら、風船の夕立が降ってきたのです。屋根に葉に花に川に、大小さまざまな赤や黄色や青やオレンジの色という色の風船が、跳ねては踊り、なかには鈴を付けた風船もあって、可愛い音をいつまでも響かせて、ゆっくり空に舞い戻っていきもするのです。

これは、小さな道端の葉裏の陰で一匹の天牛が、こんな夢を見て眠っていましたというお話です。そして、そんな夢の隣を誰かが今、通りすぎていったというお話なのです。




自由詩 夢の隣 Copyright 月形半分子 2013-10-27 21:16:31
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