ましろいかお
服部 剛

気がつくと
見知らぬ部屋に、彼は立っていた

窓から吹き込む夜風に
カーテンはふくらんでいた

鏡に顔を映すと彼は
ふと 自分を
のっぺらぼうにしたい衝動に駆られた

ポケットから取り出した消しゴムでこすり
自分の顔を白くした後
きらりと光る美男子を描いてみたが
3枚目体質の体の
あちらこちらがむずかゆくなってきたので
慌てて消しゴムでこすり、今度は
魅惑の美女を描いてみたが
彼のうすい胸板がふくらんできたり
手足の指にマニキュアを塗ったり
唇に紅をひくのも
たまには悪くはないが
出産となると
きっと泡を吹いて気を失うであろうし
「美男・美女=幸福」になるとは限らない
と言い聞かせ
無駄な抵抗はやめにした

困ったことには
幾度消しゴムで、消しても、消しても
白い顔の下から
自分の顔が浮かびあがってくるのだ

仕方がないので
鏡に映るさびしげな顔をじっとみつめていると
なんともいえぬ不思議な親しみが
むくむく湧いてきたので
久しく忘れていた
よい心もちのまま
彼は布団ふとんにもぐることにした


  
  *初出 同人誌 「母衣」・2号  






自由詩 ましろいかお Copyright 服部 剛 2005-01-09 17:12:19
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