十月の晴れた昼下がり
オイタル

十月のある晴れた昼下がり
どこかで聞いたような一行だが
襟首をきれいに刈り上げたような小さな図書館で ぼくは
真夜中にマクドナルドに行くお話を読んでいた

フォト用紙みたいな装丁の
指紋のない指先みたいな装丁のそのお話は
いつ始まったとも いつ終わるとも知れず
やがてなだらかに終わっていた

お話の中ではうまくしゃべれない男の人と きれいな女の人が
頭にスキー帽をかぶっていろんなものを並べてみていたが
ぼくの頭の中ではずっとBJのウイーンが流れ
バラード風の耳鳴りが流れていた

ぼくもどこかに行きたいのだ
どこかに行きたい
行きたい場所も実はわかってる
でもそれがどこなのか 道は林をひと巡り

スカートの短いお嬢さんが
ライトの灯った箱の中に滑らかな頭を突っ込んで
泣いているのか 笑っているのか
静かに懸命に首を振っている

やがてぼくは耳鳴りのようにウイーンに導かれて外へ出るのだ
背の低い雑貨屋 無口なスナックの看板
口うるさいラーメン屋と肩のこった地産地消の店
みんなで黙って腕組んで 頭上を遠く青空が横断する

ぼくも行きたいところがあるのだが
それがいつなのか
それはどんなふうなのか
それが皆目わからない

十月のある晴れた日 晴れた日の午後だ とにかく
ぼくは きれいに刈り上げられた首筋の
小さな風の吹く図書館で
真夜中にマクドナルドに行くお話に耳を傾けていた


自由詩 十月の晴れた昼下がり Copyright オイタル 2013-10-27 14:34:04
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