現代詩バーリトゥードフォーラム
ただのみきや

詩に関節技をかけられる
ギブアップして時代に媚びたと白状する

詩に投げ飛ばされる
天地回転 ものの見方がひっくり返る

詩に首を絞められる
反則も何もありゃしない
ついには殺されてしまうこれで十二回目

詩に告白される「好きです」
「……ごめんなさい」と通り過ぎる

詩に    眠らされる
催眠術 いや 子守歌だなこりゃ

詩に誘われ海へ 二人砂浜を歩く
白い波が素足を濡らし真砂が足の指に

詩に誘惑される
亜麻布一枚向こうから悩殺のポーズ

詩に宣言される「おまえはすでに死んでいる! 」
「……ごめんなさい」と通り過ぎる

詩が国家転覆を目論んでいる
詩に生まれなければよかったのに
不憫なやつだ

詩に騙される
読ませた後からぺろりと舌を出す

詩で家族の秘密が明かされる
知ってしまった詩人の家の晩ごはん

詩に秒殺される
詩心が痙攣しながら墜ちて行く
七五の使い手恐るべしかな

詩から花の香が漂った
いやこれは彼女の香水 もう昔の話

詩に崖から突き落とされる
振り向きざまにぺろりと舌を出すのが見えた
「またあんたか! 」

詩が忍装束で瓦屋根の上を跳んでいる
文語手裏剣が眉間に刺さる

詩が死にたがっている
さもあらん詩人が死にたがるのは世の常だ

詩がしつこく死にたがっている
死にたい詩でこれほど死にたくない気持ちを伝えるとは

詩人が「本当に死んでやる! 」と言って自殺した
今は別のハンドルネームに生まれ変わって活躍中だ

詩が世界征服を企んでいる
おれはレジスタンス詩を書いて対抗する

詩が青い小箱に隠れたまま
カラクリが解けず子供に戻って悩み続ける日曜日

詩が「太陽と北風」について講釈たれる
旅人が若い美人かどうかだけが気がかりだ

詩が画面いっぱい文字の群れとなって襲いかかる
理性が解体されて巣穴に運ばれて行く
長すぎる散文詩の恐怖

詩がもっともな正論を吐いて同意を求めて来る
ズボンを脱がせてパンツも下ろしてやろうか!

詩に一刀両断真っ二つにされる
はらわたは十二単のマトリョーシカ一番奥の幼心まで
血みどろです お見事

詩に慰められる
いいやつだな おまえって

詩のくせに他の詩のことを「あんなものは現代詩ではない」と言っている
もはや伝統芸能詩だな あんた

詩が突然駆け寄って来て駄洒落で腹を刺す
「なんじゃこりゃああ! 」なんて遺憾 言ってたまるか

詩に泣かされる
喜びよりも悲しみに共感するのは何故かしら

詩が背中を向けて去って行く
呼び止めることのできないやつもいる

詩の中で詩人が詩を書いてその詩の中で詩人が詩を書いて
その詩の中で詩人が詩を書いていて……
どうやらこの人スランプらしい

詩が脱皮して蝶になる
ただ見つめるだけ 風は亜熱帯

詩がまだ書かれていない
世界は卵の中で宇宙を聞いている





自由詩 現代詩バーリトゥードフォーラム Copyright ただのみきや 2013-10-26 00:21:48
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