ReAg

「息」

9月16日

8年前に惜しまれながら旅立った若人は
もう忘れ去られてしまった
今や花を捧げる人も疎らで
若人の大好きだったところにいる人の
多くは名前すら思い出さない

9月16日

僕は慣れないタバコをふかして
若人の後を追おうか考えている
1本で変わるはずのない何かが
圧倒的な距離を突きつけるんだ
涙が赤色に染まったところで
会う約束なんて煙に巻かれる

9月16日

歪んだ視界に澄んだ時計の音が響いて
世の中が動き出す瞬間が
ぱっと鮮明に輝いた
刺さる視界に咳払いをしたところで
若人の肺が健常な姿を取り戻しはしないし
僕の灰が宙に舞うこともないんだろう
そうやって日々は過ぎてきたし
若人はそれでも確かに生きていた

9月16日

若人が失くした肺の代わりに
僅かな花達の
香りを嗅ぐんだ

ああ、寂しいなあ。

どうにか正気な言葉を捻り出しても
返事をする人はいない
けれど
枯れるのを待っている瞬間位は
もう少しだけ抱えてやりたいから

そうだろう?
9月16日。


自由詩Copyright ReAg 2013-10-19 04:25:32
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