ジョロウグモ
イナエ

早朝 
寝ぼけ顔で庭に降り
如雨露を取りに飛び石伝いにゆけば
いきなり顔面を覆う蜘蛛の糸

悲鳴こそ上げなかったものの
粘っこく絡みつく網に息を止め
指を立て取り払ても 
容易には剥がれない

その上 蜘蛛はどこに行ったか姿見せない
昆虫より足が多く 黄と黒で彩色した蜘蛛が
わたしの顔のどこかに隠れているかと
考えただけでもおぞましい

昨年は 空を横切る電線の間に 
幾つもの巣を張り巡らして
ときには 朝露を朝の光にきらきら光らせ 
手足を伸ばした巨大な蜘蛛が中央に居座って
あたりを睥睨し ヒトリガを幾つも捕らえていた

今年のジョロウグモは小柄
ほっそりした体で庭の片隅に 
透かし見ねば分からないような巣を慎ましく張り 
ムシやヒトを捕らえようとしたところで
結局は人やら猫やらに邪険にされ 破られる

ジョロウグモよ 
遠慮はいらない 中空に巣を張り
堂々と 生きる糧をとらえよ
それは 神も認めた狩りの方法
たとえ空飛ぶ鳥に捕らえられようと
己の生き方を貫け


自由詩 ジョロウグモ Copyright イナエ 2013-10-13 22:41:46
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