秋のはじまり
灰泥軽茶

エプロンをつけたおじさんのような
がらがら声のおばさんのような
二人組が立ち止まり
暑いのか涼しいのかさっぱりわからないねえと
言っている横を

私はTシャツ一枚で通り過ぎていくのだが
ときおり涼しい風が吹いてきて
ぴゅうぴゅう吹いてきて
だんだん寒くなってきて
ジャケットを羽織るのだけれど
むしむししてきて
じんわり汗をかいて
自転車のカゴに脱ぎ捨てる

どこかのお店に立ち寄れば
クーラーがかかっていて
しばらくすると悪寒がする

風邪の引きかけなのかな
お腹も少し痛いなと
体の調子もいまひとつなのだけれど

空を見上げれば
しっぽりと心が丸まり
いつかの記憶が蘇る雲が
どこまでも広がる

あぁもう秋なのだなあ
あぁこうして
いつのまにか気がつけば月日は流れて
行くのだなあとぼんやり
足の裏で風をうまく引き寄せ漕ぎながら
わたしは追憶の夜長へと
にゅうっとスムーズに押しだされていく











自由詩 秋のはじまり Copyright 灰泥軽茶 2013-10-11 02:19:37
notebook Home 戻る