いくらか反射する水。終わりのあとで
岩下こずえ

まつげはひかるけれど、それはあなたの水ではない
雨あがりのドライアイは
公園の風景を
焼きつけるしずかな鉱石のように
まばたきをしない
「むかし、どこにいきたかったのかとか、
 ほんとうに思いだせるわけない。
「それならべつに、ここでいーじゃん。
 どこでも、ここで、いやでも、
ゴールだよ。
桜色のリボンが切れたんだ。ポニーテールの
きみが髪をおろし、世界を遮蔽した
しんじゅんや、拡散が
育つことだとしったから、手はいつも、拒むように
小刻みにふるえた
そのかたちなら、わたしのいびつな骨とでも
脅えた小隊みたく
せなかをあわせられる気がしてたんだ
「過負荷の日記読んだことある?
「死んでもないから。ニアセパムちょーだい、なにも考えず、
いまが溶けないと。
見わけがつかなくなるべきで、識別しろってくるもの
コインランドリーの看板や
両親にくっついてた軽いバツだとか
めざめとねむり
低用量ピルのひゃくぱーせんとについて
いつかあした、健康食品の店の面接にいって
みんなで健康になりたいって
いうこと
よくわからないキノコのエキスで
こんな終わりでもながびかせたいって
「いわないこと。
「いわないことばかり、
わたしがいったこと。
ブランコのこどくだとか、すべり台の支柱のあいあい傘とか
そんな話で
おとなびたきみにわざと、わざとらしくあるほかなかった
外をあたえた
あなたでないわたしを穿ってその孔から
呼吸だけ、していてほしかった
ゆくあても示せず
なんの約束もないくせに
小指だけ、もっとしなやかだった
べつの小指とひっかけてあるく記憶は
たしか
少女に似ていた、と思う。
なれなかったんだ、あなたに
わたしは
「識別してるよ。はじめから、あなたを
「おなじ言葉、かえしたらどうなる?
どうにもならない

けいぞくする
わたしたちの見わけはつかない
あなたは手のくるぶしをよけいにとがらせ
漏れいるひかりを
つかむそぶりをひるがえしたあと
おびただしいだれかとおなじように、くりかえし
ちいさく前髪をかきわけ
ひとみを乾かせる
雨あがりにしずく降らすハルニレの樹の
うろの目に
わたしたちの公園は
うずをまいて
下水する




自由詩 いくらか反射する水。終わりのあとで Copyright 岩下こずえ 2013-10-09 18:17:35
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