鳥の音、遠い声
霜天

たとえば、庭に米粒を撒くこと
集まる鳥たちの名前をよく知らない
色、とりどりに、鳥
天空から降ってくる音
羽ばたく、空
それさえ分かれば、自分のどこかで
満足している誰かが在る

遠い言葉は遠いことで
懐かしむだけで、顔を思い出せない
ぼんやりと霞んだ風景と
あの頃流れていた歌の
メロディーをどこかで落としてしまった
探し出せないところでも
諦め顔の誰かが在る



白く太陽のゆらいだ日
動き出さない冬に雲間から射し込んで
初恋の校庭はすっかり芝生がはげて
剥き出しの地面に誰かが走る声がする
判別のつかないそれを
遠く
受け入れることに慣れている



鳥が降ってくる音がする
初恋の君の写真を見つけた
遠い声、遠くから
忘れようにも
手放さない誰かが在る


鳥の音、近くから
僕はこの鳥の、名前を知らない


自由詩 鳥の音、遠い声 Copyright 霜天 2005-01-08 01:41:53
notebook Home 戻る