鳥の音、遠い声
霜天
たとえば、庭に米粒を撒くこと
集まる鳥たちの名前をよく知らない
色、とりどりに、鳥
天空から降ってくる音
羽ばたく、空
それさえ分かれば、自分のどこかで
満足している誰かが在る
遠い言葉は遠いことで
懐かしむだけで、顔を思い出せない
ぼんやりと霞んだ風景と
あの頃流れていた歌の
メロディーをどこかで落としてしまった
探し出せないところでも
諦め顔の誰かが在る
白く太陽のゆらいだ日
動き出さない冬に雲間から射し込んで
初恋の校庭はすっかり芝生がはげて
剥き出しの地面に誰かが走る声がする
判別のつかないそれを
遠く
受け入れることに慣れている
鳥が降ってくる音がする
初恋の君の写真を見つけた
遠い声、遠くから
忘れようにも
手放さない誰かが在る
鳥の音、近くから
僕はこの鳥の、名前を知らない