秋が過ぎれば冬がやって来る
アラガイs


供養の拝礼を終える
そっと汗を手のひらで拭うと
和尚は顔の皺を刺青で埋めた
浄門の外房には紅白の熨斗が貼られ
それを見た人々の信心は以前よりも増した
(ああ そうじゃよ
冬まえに山がらすは内宮へ巣を張りに帰るところじゃ)
人里離れた宿坊に四輪駆動が駆けて来る
季節は稲穂も奉られる頃
和尚は衣を置いて街へ出た
ついでにひとりの浮浪者が村に棲みつき
今年は長雨もなく
柿の熟むのもはやかった
(何かしら催しものが多くて、
つい眺めてしまうのが癖になるね)
施しものなら何処にでもあるのに
おこぼれの餌を待つそぞろ虫
祭りが過ぎても浮浪者はまだ生きていた
…合歓の木から朝陽が差し込むと
、濡れた爪に霜が溶け出してくる…
早朝から派手な娘を助手席に乗せているのは和尚だろう
寺の住職はヤンキーに戻っていた
思ったとおり巣宮でおんなを抱いたまま
山がらすは麓へ出ようとはしない
熱い息を吹きかけてみる
木枯らしが蹴りあげても
道端の地蔵はじっとして動かない 。













自由詩 秋が過ぎれば冬がやって来る Copyright アラガイs 2013-10-05 23:37:20
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