秋別れ
そらの珊瑚

支柱にありがとう、と言った

夏のあいだじゅう
あなたが支えてくれたおかげで
私は安心して背を伸ばし
太陽に近づき
あおい葉を繁らせ
たくさんのこどもを生むことができた
赤い血がしたたる
温かいミニトマトを

支柱にありがとう、と言われた
君は僕が誰だったのかを
思い出させてくれた
支えることに
逆に
支えられるってことがあって
それは
美しい歌を
ふたりでうたうような優しい仕組みだったし
まるで理不尽な石つぶてさながらに痛い
(ああ、生きることってやつは!)
どしゃぶりの雨の夜には
そうあるべき
最も祈りに近い愛の形にも似ていただろう
与えられることで満ち足りる湖のように
与えることで満ち足りる砂漠だって在る
でも明日から
ただの棒さ、
またひとりに戻るよ、と

私はさよならを言いあぐね
最後の実を
秋風に向かって
あかあかと灯した





自由詩 秋別れ Copyright そらの珊瑚 2013-09-28 22:14:18
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