Cigaretteが消していく未来と命
りゅうのあくび

二十歳になったばかり
一方的な失恋の末
浪人時代の
受験戦争に嫌気がさして
Cigaretteを吸い始めた

カリブ諸島原産のCigaretteは
大航海時代にコロンブスが
率いるアメリカ探検でヨーロッパに
伝わりCigaretteの害を知らずに
世界中の数えきれない
人間が煙のように命を消した

その昔
立ち上る煙は戦争が
始まる合図だったが
現代では緩やかな自殺を
思う人の命が削られている
サインでしかない

お世辞でも
美味しいとは言えない
煙の味は
時間とお金と健康を
大げさでもなく
確実に壊しているのだ

せきばらいをする彼女がいて
ともにCigaretteを
吸うことに罪の意識を
覚える日々が続いていた
僕が贖うべき罪を彼女も
Cigaretteを吸うことで
それにならって罪をかぶっていた
わかっているので
胸がとても痛んだ
吸うたびとても苦しかった
それでもCigaretteを
求めていた自分と
連れになって吸っている彼女が
今ではもう信じられない

いつも口づけは苦かったと思う
とうとう今夜
彼女が寝ている間に
意を決して
徹夜で自分と
彼女のCigaretteを
一本を残して吸い尽くした
これでCigaretteを
吸い納めにすることにする
僕は朝まで起きていて
彼女に最期の一本を
吸うかどうかを
聴くことにしている
当分のあいだ
戒めの一本として
飾っておくかもしれないが
それまでの時間は
これまでの人生の片づけをする

その人生の片づけをできなければ
二人は未来だけではなく命をも失う
もう少したてば
きっともう口づけは
苦くはない



自由詩 Cigaretteが消していく未来と命 Copyright りゅうのあくび 2013-09-26 04:51:13
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