Tシャツでは少し寒い
アラガイs

九月も末だというのにまだ汗はとまらない
車の冷房は下げたままだ
最後にどうしてもあの海辺が見たかった
親父の入院中きまって立ち寄った、
、あの海水浴場へ

市街を抜け、15分も走ると左手に海が広がってくる
海岸線は数えきれないくらい走った
この辺りまで来るとまわりの景色はほとんど変わっていない
わずかに残っていた田んぼが雑木林に姿を変えたくらいだろう
もうこの車で何台目だろうか…
…簡単には思い出せない年月だ

(君の、この青い空とはしる海原)
失恋すると真っ先に海沿いの国道を走りたくなる
流す曲はいつもキマりごとのような
そう、、Aminorを聴きながら君は何度でも泣けたんだ

病院を通りすぎると信号で待たされることもない
こんな風にして、いくつもの車を乗り継いできた
飛ばしていると陽とレンズも一体に溶け込んでくるから
あたまにはぼんやりと風景が霞んで見えてくるぼんやりと…

…足回りのゴムが朽ちてますね 。ショックカバーも破れてる。
まだエンジンはバリバリなんだけどなぁ 。
走行距離が少ないですからね。でも20万じゃ収まらないでしょうね 。
廃車にするしかないかな、惜しいけど…

地味でカッコのいい車じゃなかった、そのぶん、壊れて手を煩わせることもなかった
久しぶりにあの頃の曲を聴いている
すれ違う度に胸がつかえて、おもわず涙が溢れそうになる
いい年をしてさ、
、また感傷的な気分を味わうつもりらしい

なんだかウィンドウの顔がみんな好い人に見えてきて
夏の重たい風もすっかり乾いていた
思えば兄貴はいい車を譲ってくれたんだ
・あ・り・が・と・う・
あと二週間でこの車ともお別れだよ 。

トランクを空けた。
被う夕焼けが熱を冷まし
むき出しの肩が疼いてくる
日付の風向きは容赦なく変わり
そろそろ長袖なしには眠れないかもしれない 。














※お題を拝借いたしました。


自由詩 Tシャツでは少し寒い Copyright アラガイs 2013-09-25 01:33:34
notebook Home 戻る