石の星座
まーつん

 石ころのように
 蹴飛ばされた
 君の命が

 川の流れに
 ぼしゃりと飛び込み
 揺らめく水の底を
 ゆっくりと転がって

 手の届かない
 透明な棺桶の奥から
 空を見上げている

 昼も、夜も…

 そんな
 石ころたちが
 時の流れの川底に
 無数に落ちている


 終わったと
 思っていた

 光溢れる生の岸辺から
 時代の硬い爪先が
 人々の命を
 蹴り落とすような世界は

 だが風は 止んだのではない
 ただ 息を潜めていただけだ

 聳え立つ 山の頂から
 今 時代の風は
 強く 冷たく
 吹き降ろし始める

 だが
 その麓には
 膝を抱えて蹲る
 一人の少年がいる

 垢じみた顔
 みすぼらしい衣服
 空き腹を抱えて
 地べたに小石を
 並べている

 細い指先が描き出す
 うろ覚えの星座の形

 天野原を駆ける
 一角獣の嘶き

 虚空を踏みしめ
 矢を番える
 射手の横顔

 逃げるオリオンを
 追い立て、振り上げる
 サソリの尾の針先

 乾いた土に
 雨を注ぐ
 水瓶の傾き…

 暗い大地の片隅で
 星の役を振られた
 名もなき石たちは

 光ることもできず
 済まなそうにしている

 それでも
 雲に覆われた
 空の下

 冷たい風に
 前髪を揺らす
 少年の黒い瞳に


 星の輝きは
 映っている




自由詩 石の星座 Copyright まーつん 2013-09-23 20:37:09
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