賛歌
壮佑
ダダ漏れのDark Matter 鉛色の重力
街を歩いてもアスファルトに走る無数の亀裂
から滲み出てくる闇を見つめるだけだ
ああ この皮膚がすべて剥がされても
感じているか? 動いている 動いてい
る 闇の中を 蠢く者がいる
おう 耳孔でウラン弾が爆ぜようとも
聴こえているか? 無限に遠く 無限
に近い 闇の中で 囁く者がいる
押し黙った孤独な獅子の心音を聴く
どこか森閑とした場所で赤ん坊がむずがって
いる
夜の木立の奥の
沈殿する闇の中に
おまえは確かにいた
跳べ、戦慄へ、永い微睡みの季節が終わり
喉元に憑くニューロンを氷の舌で研ぐ 散ら
かった時間の魚達を砂漠に葬り 増殖する網
の目に溶けて行く世界を迫撃する
天幕の裏側で
子供達が
クスクス笑っている
凍原は静謐のうちに発火して 崩壊へと多
重に揺らぐアーキテクチャーの間を おまえ
の光跡が駆け抜けるとき 真昼の青空いっぱ
いに ディアスポラの星達が瞬き始める
そして
いま
湧き上がる群雲を掻き分けて
夏がやって来た
脈動する色彩の
跳躍する祝祭の
血よりも凶暴な夏だ