夕暮れ
Lucy

慕情とか
郷愁とか
そんな古めかしい語句を
あてはめてみたくなる
吊り革につかまってみていた
車窓の風景

たくさんの人々の日常が
幾重にも重なり すれ違っているはずの
それでいて私には決して触れてこない
街並みが
しらじらとした美しさで
つながっていく
すぐそこにあるようでいて
都市は遠景
どこまでも他者

のど元にこみ上げる
懐かしさは
過去のどこにも帰る当てのない
見知らぬ記憶を揺り起こす

私のでも
誰のでもない名前が
影が
声が混じり合い
薄められて
都市は
私を魅了し
吸収し
滲む夕闇に溶かして
忘れ去ってしまう


自由詩 夕暮れ Copyright Lucy 2013-09-14 15:06:08
notebook Home 戻る