風の通り道
そらの珊瑚

九月十三日の朝
風のこどもたちは
キッチンの西窓の向こうで
すでに足踏みを繰り返していたとみえ
私が縦長の窓を押し開くと同時に
遠慮なんかこれっぽっちもしないで
じゃれあうように
とびこんできた

あいさつの代わりに
黄色いカーテンを揺らし
テーブルに出しっぱなしにしてあった
日記の頁をめくる悪戯っ子
ハミングじかけの軽やかさで
薄曇りの東の窓から出て行った
通知表に書かれた
しょうもない私の欠点を思い出す
 直すようにしましょう
直したつもりでも
今でもひょこっと顔を出してみせたりする
私のなかのえいえんのコドモ

此処から東へたどってゆけば在る
故郷の小学校の
同窓会の案内が届く
行かなければ
一生会わないだろう人がほとんどだけど
行かなくても
風のたよりが知らせてくれる 
いつかのこどもたちが
私と同じ年月のオトナを身に着けていることを

風はなぜ通るべき道を知っているのだろう

さようなら 風のこどもたち
何億年も前から
きみたちは軽やかだったし
これからもそうあり続けるのだろう
長所や欠点がもしあるとしても
混ぜあって
えいえんのこども
透明な後ろ姿を見送ったら
タイマーの電子音が鳴り
私の一日が始まった
白いごはんが
ハミングまじりで炊き上がったよ




自由詩 風の通り道 Copyright そらの珊瑚 2013-09-14 12:33:19
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