夏の欠片
nonya


秋雨前線が
垂れ下がった
ベランダの
とある午後に

室外機が
押し黙った
ベランダの
とある挟間に

アブラゼミが
ひとつ
転がっていた

季節の掌から
垂直落下した
果実のように

キチン質の
脇腹あたりに
はびこる死の黴

知らん顔して
そおっと
手を伸ばす

とたんに
思い上がった
右手の甲に

オシッコを
浴びせかけて
蘇生したおまえ

夏の欠片が
季節の境界線を
引きながら

消えていった




自由詩 夏の欠片 Copyright nonya 2013-09-07 11:42:23
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