見送るだけ
ただのみきや



残暑なんてあっという間
待たされるのは春くらいなもの

きょう雨はやわらかな御手
緑深い山々のあたまを撫でている

天はやさしく言い諭す
まるで母親のように

さあ片付けを始めなさい
今からしないと間に合いません

所狭しと散らばった無数の命
一つ一つ集めては箱に仕舞って

木々たちが錦の衣を脱ぎ捨てる頃
月光が切れるくらい冷たくなる前に

葉隠れ楽士のカンタンが
先に逝った蟲たちを詠っている

夏は何度かふり返る
そして去って行く白い雲

人はただ見送るだけ
去り逝く白い煙となる

その日まで





自由詩 見送るだけ Copyright ただのみきや 2013-09-05 21:44:12
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