崖のほとり
Lucy

その崖のほとりに
一輪咲いているはずの花は
どうしても一目見たくて
見ると 手折りたくなって
手折ると持ち帰りたくなり
持ち帰ると
さて どうしても
挿した花瓶から引き抜き
力任せに叩きつけ
さらに踏みにじらずにいられない

見上げるとたくさんの灰色をした雲が
ずかずかと太陽の眼前を横切るものだから
地上は翳ったり明るくなったり忙しい
帰るところも
大事な荷物も持ち合わせてはいなかったので
限りなく自由な寂しさに溺れ
守りたいものを手にした時から
喜んで鎖に繋がれた

海から海へ吹き渡る風が
熊笹を四方へ目まぐるしく倒す
斜面の細い山道を
今も危なげに辿る夢を見る



自由詩 崖のほとり Copyright Lucy 2013-09-04 21:14:04
notebook Home 戻る