山の水
yo-yo

山の水があつまる
わんどの深みに
ザリガニのむき身を放りこむ
暗い川底が
ぐるるんと動いた夏

七輪でおばあさんが焼く
ナマズの蒲焼き
田んぼの畦を吹きわたって
麦わら帽子の
ひさしをかすめて

いくつもの夏が
細い野道を帰ってゆくようだ

虫になって草を分ける
小さな山を越え
小さな山に辿りつく
足の下の土がやわらかい
そこに
おばあさんは眠る

わんどの水を焦がして
ナマズの風になる

夏は
山の水が澄みわたるので
遠い川が近くなる
ときどき夢からあふれて
黒い生きものが泥をまきあげる
水の底が
空よりも深くなる







自由詩 山の水 Copyright yo-yo 2013-08-28 06:00:31
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