対話篇 (花)
マチネ

向こうの椿は鮮やかであるとあなたは言った
足元を蠅が行過ぎた
蝦蟇ガマが捉えて
粘つく口で接吻をした
向こうの椿は鮮やかだった

こちらの躑躅つつじは枯れ果てているとあなたは言った
指先に蜂が吸付いた
針が捉えて
柔らかな肉の丘を抉った
こちらの躑躅つつじは枯れ果てていた

(風の吹き行く)

そちらの桜は鮮やかなのかとあなたは訊いた
唇に付されたプラスチック
声を捉えて
ざらつく砂にすり替えている
こちらの桜は振り落ちている

どこの椿が落ちずにいるかと私は訊いた
心臓に突き刺した脈動器
血汐を捉えて
うずもれた朝を叫んでいる


こちらの椿は鮮やかである



あなたが言った


足元を

蠅が

行き過ぎた




あちらの椿は鮮やかだった



かぜ、かぜ、かぜ。


自由詩 対話篇 (花) Copyright マチネ 2013-08-21 13:29:14
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