産声
もっぷ
黄金色に揺れる風景の、向こう側を知らない
あの子は
ちいさな家の出入り口の前から黄金のその揺らぎまでを
世界と認めて
何の屈託もなかった
愛らしさは笑顔からよりも俯きから顕れ
時に純水のなみだに見受けられ
誰の気を惹かずとも
その子どもの、その少女だけの神のこころを
魅了してやまなかった
恵みはそれだけ
ひとつの神の御こころのみが
彼女を見守るすべてだった
やがて、
老いた
もはや少女ではないその
老婆は悟る
ここは、胎児としての夢の中なのだ
ということを
老いてしまったのではなく
出口へ入り口へ限りなく近い距離を得た少女は
日々を朗らかに徴しながら遺すものなく
ただひたすらに待っている
その、日を。
(まるでいまのわたしのように…
やがて新しい産声!
黄金色の風景の向こう側で!