船酔い
睦月十八


夏の密度に五感が塞がれる
見たことのない景色
デジャブ、均等を失う感覚に
船酔い

昔から弱かった
友達より先生より親より
拠りどころだった
あの頃、レモンのキャンディ

今は夏に酔う

大人買いをした
酔い止め用のレモンが
船底でころがって
拾ってくれるだれかがきっと
運命の人

ゆれてはみ出した
塗り直しのリップを笑って?
 レモン、転がしてあげる――

船酔いがひどいみたい
ポケットのキャンディをまさぐる

変わらない
バリエーションを増すのは夢のほう
ときどき現実より、リアルなんだ

耳鳴りがして
密度をかきわけていく

レモン、どこ?



自由詩 船酔い Copyright 睦月十八 2013-08-20 00:08:09
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