千曲川−夏ー
……とある蛙
信州の古城の櫓跡から
千曲川を眺める
川面の風景の上には
大きな空が広がり
風が吹きわたる
風に膨らまされた空は
何も言わず、僕の頭上にある
古戦場の舞台となった古城
望める山を指で突く
何の変化もなく
黙ったまま空は澄み渡る
沈黙する青空は
真っ黒な自業自得と
許されない腹の虫を
僕に思い出させ
さらに、そのまま広がる青空
頭上に青い空、吹き抜ける涼風
心を閉ざしたまま
解決のつかない時間が
のし掛かる
相変わらず空は青く
千曲川は蛇行する
対岸の彼方
遠景には青々とした山脈
だが、一時の目眩を感じ
風に覚醒される夏の
八幡原