お墓参り
Lucy

住む人の居ない
山の墓地

お盆には賑やかに花々が供えられている
生まれ故郷を訪れた人の形跡が
風に揺れる

たった今まで
誰かがそこにいた証拠
ロウソクの炎が
消え残り
線香の束が
煙をあげる

けれど不思議と
誰にも会わない

知った名前の墓石をみつけ
ああ、あの家のお墓は新しくなり
あのお宅の奥さんは去年亡くなったのだと
手をあわす

満々と水をたたえたダム湖の畔を
車で帰る
すっかり作り替えられた広い道路
新しい名前がつけられた幾つもの橋

学校の裏山に駆け登ると
箱庭のように小さく見えた
川沿いに揺れる柳の木
田んぼ
畦道
郵便局
お店
吊橋
診療所

校庭でドッヂボールした友達
転勤する時泣いていた先生


二度と寄り添って暮らすことのない人たちの消息が
見知らぬ湖面をかすめ飛び
山間の静かな墓地に辿り着く




自由詩 お墓参り Copyright Lucy 2013-08-18 17:18:45
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