デカルコマニー
そらの珊瑚

ほぼ体温と同じくらいに
熱せられた夏が
発火点を探しあぐねて
彷徨いの果て
私の絵の具を溶かしていた

指で透(なぞ)写る
あらかじめ決められていたように
螺旋状に滑り出すその先で捉えた
微かに仄めかされたその粘性は
捨てきれぬ執着のようだ
片面だけの不完全な世界に
色彩の糸を
繭の中で紡ぐように
柔らかく
混ぜ合わせる
緑の血管
金銀の神経管
同時に
頑なに主張する者もいて
特に背骨は
訳有り気なカーブを描く
試作は繰り返され
ヒトの記憶は上書きされる

夜の扉が
ぱたりと閉じる
誰もあずかりしらぬところで
(無意識という名のもとで行われるため)
世界は反転し完成される
こんなにも
あっけなく
たやすく
写し取られていくあなたという私
漸く左右対称になったエフェメラが
ゆらゆらと飛び去った

行方は杳として知れす
額縁だけが残った


自由詩 デカルコマニー Copyright そらの珊瑚 2013-08-18 10:45:46
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