蝉の唄
創輝

たった七日しか生きられないんだよぅ……

ミーン ミーン

蝉が鳴いている そういったら、君は「違うよ!」と言った
君は、「鳴いてるんじゃなくて歌ってるんだよ」と、どこか愁いを帯びたまなざしで夏の空を見上げていた

たった七日しか生きられないんだよぅ…
もっともっと長く生きなきゃいけねのに
俺だであと3日もすりゃ死んじまういのちなんだよぅ
だから 俺の歌を聴いてくれよ

なぁ 人間ってのは馬鹿な生き物なんだな
今日も革命 明日も革命 ずぅっと革命ばぁっかりやりたがってんだな
ずっとずっと昔にも 革命ばしてたんだってなぁ、動物んなかじゃずいぶん有名な話だよ
べつに今のまんまでいろなんていわねぇよ、俺にだって変えてぇもんはある。
だげどよぉ、お前らが血で汚しやがった地面の下に
俺らずぅっと、たった七日を待って埋まってたんだぞ

革命家の なぁにがそんなに偉いんだ?
遠い遠い異邦の国で、「人が傷つかない世界にするため」なんて言って
どっかのだれかが革命起こしたんだってなぁ

馬鹿な話だよ

革命起こしてる間に 女房、子供、恋人死なせたら意味ねぇだろが
女房 痛がらずに、傷つかずに死ねたって言えんのかお前
子供 死に目に、親にいてほしかったに決まってんだろ、会いたかったに決まってんだろ
恋人 ほっぽり出すような奴に惚れなきゃ良かったって、思ったかもな
どんなに高尚な理由掲げても
武器を手放せないんだったら革命なんて馬鹿騒ぎじゃねのか

知ってるか?
革命だ って言った大人に殺された子供、いっぱいいるんだぜ
子供の血はな、大人みてぇに汚れてねぇからサラサラだから すぐに土に染み込んだんだよ。
お前らがあの子らの死に祝杯を挙げたの
俺達、地面の下で聞いてたんだぜ
虫が好きな子がいた
絵を描くのが大好きな子もいた
スポーツも、勉強も…… あの子供らが好きなものに、何か悪いもんでもあったのか?
親を敬え なんておめぇらずっと言ってきただろ
馬鹿親でも敬ったんだよ、お前らが殺した子供らは、皆。

だけどな
俺達動物がやべぇくらい尊敬してる革命家がいるんだよ
武器は全部自分でぶっ壊してさ
誰も傷つけずに革命を成し遂げて 幸せな世の中にしたいって思った奴だよ

今の世の中言ってるよなぁ 「言葉もじゅーぶん凶器ですよ」
だからそいつ 凶器を封じるために、言葉も限定してたんだぜ
「愛してる」 「ありがとう」 「幸せだよ」 この3つにさ
そいつの革命が成功したかって?
……そんなの、見りゃあわかるだろ。

名もない革命家だったよ 動物が尊敬しちゃった革命家だったよ
あいつも馬鹿な人間の例には漏れないんだろうけどよ
ああいう馬鹿ならいいかもな
地面を血でよごさねぇやつだった ずぅっと笑ってる奴だった

なぁ、俺達たった七日で死んじまうんだよぅ…
だから
俺の歌を聴いておくれよ
これからも、ずぅっと蝉は歌ってくかんな


自由詩 蝉の唄 Copyright 創輝 2013-08-14 21:47:27
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