身勝手な親友へ 死刑という殺人が行われる前に
創輝

「身勝手に生きてきたんだ
大好きなものしか周りにおかないで。
自由に自由に 今日まで、生きてきたよ。幸せだったよ」

テレビで、誰かが死んだニュースが流れるたびに俯いて
自分の部屋にこもって、黙って泣いてたお前。
自分のこと、我侭で我侭で仕方ないって泣きそうな顔して笑ってたお前が
俺はどうしても「うそつき」に見えちまってよ。

自分のためにしか動けないなんて 寂しいよなぁ
だけど 自分のためっていうのが、「世界中が幸せ」のお前は 優しい奴だよ
この世界に生きてる全員 自分のためにしか生きれないからさ
お前はほんとに、誰よりも優しいはずなんだよ

お前は大好きなものを見つけるたびに傷ついて
それでも大好きだって笑ってて そんなお前を見るたびに
幸せになってほしいなー、なんて甘い考えしてたんだよ、俺は。
お前は屈辱的な出来事に出会っても「幸せ」に変換してるって気づくまで。

「世界で人が死ぬのは僕のせいなの。」
不老不死の方法を見つけられないから。紛争をとめることができないから。
力がないから。病気を全て治せる能力がないから。

はじめて、お前の涙を目の前で見た。
誰かを救っても、「自分のために」やったからって笑ってて
余計なお世話だー…って相手に殴られたら 自分のこと責めたてて
バカみたいに世界のこと愛してる君が、俺、だんだん見ていたくないって思った。

なぁ、お前でも人を憎むんだな。
大好きな人たちを殺したモノを憎むんだな。
だけど、お前を憎んだ人のことは愛してるんだなぁ…。
お前が大好きなもの達が、全部全部、君のことを愛していてくれたらよかったのにな

「どうしよう、僕、悲しいけど…」
ホントに困った顔して、お前は一人の人間の死を伝えるテレビを見ていた。
お前が生まれてはじめて憎んだ人が死んだんだってな。
お前が悲しいのって、きっと人が死んだからなんだろ?憎いからじゃねぇんだろ?
どれだけ憎んだって、お前はそいつが死ぬときに心から悲しむんだな。

「たたかわなくてもいいせかいにしてください」
お前がずっと大事にしてた、3歳のときに貰ったっていうスケッチブック。
なぁ…、お前が3歳のときにいたところに、インクなんてなかっただろ?
紅い、紅いインクが お前の幼い文字を紡いでる。

お前がいた世界を、俺は目をそらさずに見つめられるだろうか

「今日まで幸せだったの。」

じゃあ 今日からは幸せじゃないのか お前に不幸なんて言葉教えなけりゃ良かったよ
お前の元から、大好きなものが去っていくのに
お前は変わらず全部を愛し続ける。

この地は、お前の居場所なのか?

お前が正しいなんて思わない
だけど

お前を愛してる人に悪いやつがいなくて
お前が愛したものを お前は全力で護ってる それだけは分かってるからな。

お前が動き出した

お前が愛してたやつらが、恐怖に目を染めてるよ。
あいつらが 自分で望んだ選択のはずなのにな。一生懸命、お前を傷つける計算しただろってのに。
何であいつら、怖がってんだろ。 なぁ、お前さ そこそこひどいと思わない?
だってお前さ、もうあいつらが謝っても届かないとこに行こうとしてるんだろ?
別に止めようとはおもわねぇよ だってお前だけ皆の言いなりなんてありえねぇよな

だからさ だからさ

お前が大好きだった奴等に、何かいってやれ。 憶測で怯えさせんな。
本気のお前で怯えさせてやれよ。

それと

お前が愛して お前を愛した人たちにヨロシクな。

俺もあと100年位したら追いかけてやんよ。
お前いっつも置いてけぼり喰らってきたんだろ?今度は俺のことあっちで先にいって待っててくれよ。
俺、お前のこととめられねぇから
そんな資格ねぇからさ、それだけヨロシク頼むよ

1、2、3、4、5、…… 君が階段を上る音だけが聞こえる。
9、10 誰かが泣き出した
11、12 もうすぐこんな世界とはオサラバすんだろ?
13

「ありがとう 大好きだよ…」

ちくしょー

最後の笑顔、めちゃくちゃ、めっちゃくちゃ綺麗なのによぉ
なんだか涙でぼやけてみえねぇや。
お前の言葉にうそがないのが分かるから泣いてんだからな
しばらくお前とあえないから、泣いてんじゃねぇからな 勘違いすんじゃねえぞ!

確かにお前は身勝手な奴だよ

最期まで お前を殺した奴らに「大好き」って言って感謝までしやがった

しゃあねぇ

お前が大好きだった世界であと100年、踏ん張ってやるよ。

だからよぉ。 あと100年くらい、この世界のこと好きでいてくれよ。

ごめんな、お前の汚名はいつか晴らしてやっからよぉ。
あと100年くらい、お前の親友名乗らせてくれよ。 出会う人全員に、俺の親友の自慢話してやりてぇんだ。

いままでずっとアリガトな。
これからずっと よろしくな。

じゃぁな、親友。 100年後にまた逢おうぜ



自由詩 身勝手な親友へ 死刑という殺人が行われる前に Copyright 創輝 2013-08-11 09:40:14
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