別府湾
春日線香


小学校の桜にいつか辿り着く 吉田右門

学校前の坂を上っていくと
コンクリートで固められた左手の斜面に
ぴたりとはめ込まれた形の地蔵がいて
土の猛威を抑えているのか
背中を見送られる心持ちで
ずいぶんとほっとした
昼の空は硬質の雲を隠し持ち
いつでも流していけるんだぞと
大きな目玉を揺らしてうそぶく
町をつらぬく線路が
鉄橋を過ぎるときに
トタントタンと立てる音も
秘められた合図のようだ
それは誰に知られることもないが
いつも耳の奥で鳴り続ける
花には花の
水には雨の言葉が混じっていて
フェリーの行き交う藍色の水たまりが
山を映して黙っている様は
かつて蓮の花にも喩えられたのだ


自由詩 別府湾 Copyright 春日線香 2013-08-07 12:26:18
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