高血圧者
花形新次

高血圧者の朝が
薬なしには始まらないのと
同じように

降りしきる雨は
見飽きた景色を
消すこともなく
ただザアザアと
音を立て
瞬間には
線が重なって見える

濡れることを
厭わないのは
若さのせいさ
本当は
オレンジの傘が
とても似合ってるのを
きみは知らない
そして傘が似合う季節を
いつのまにか
通り過ぎてしまうんだ

感傷的に歩道は続いていく
いずれきみに
傘を差し出す者がいるだろう
乾いた布で髪を拭う者すらいるだろう
それを優しいと感じるかどうかは
結局のところ
きみ次第なんだよ
もうすべて
洗い流されてしまっているんだから

それとまったく同じように
高血圧者の朝が
薬なしには始まらないことを
高血圧者以外は
殆ど知らない


自由詩 高血圧者 Copyright 花形新次 2013-08-06 19:09:08
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