秘密のお話
最都 優

これは本当のお話



ぼんやりぼんやりぼんやり雲の中では

今日も
小さな小さな
トンガリボーヤが仕事をしています


その小さな小さな
トンガリボーヤは


ため息をするだけで
甘い甘い
ふわふわした空気達を

冷たい氷に変えられるのです。


今日もはぁー、、、
そしてはぁー、、、
一息ついてはぁー、、、
仕事中でも首をもたげて手をあてて
はぁー、、、
はぁー、、、
はぁー、、、


その度に
下へ下へ冷たくなった塊は
途中で溶けて
雨になって
落ちていきます。


望遠鏡を片手にはぁー、、、
眠につく前にはぁー、、、
ご飯を食べて
テレビ見て
起きて背を丸くして
はぁー、、、
はぁー、、、
はぁー、、、




何があったの?どうしたの?
あのオッカナイ雷神や
風を運ぶ風神は大忙し




いたたまれなくなって
大神様へ
トンガリボーヤは相談にいきました



あのね?神様あのね?あのね?
ボショボショボショボショ
内緒の内緒の内緒の話
あのねの一声で神様は全部知りました。



「そう、
下の人が羨ましいんだね。
あんなに笑っているからね。
君もあぁ、なりたいんだね」

でも
大神さまは悩みました。



どうしよう?あの子も人間に?
いや、駄目だ
そんなの前例がないから法律大臣の
空の神に怒られてしまう


うーん
うーん、、

その間もボーヤはため息が止まりません


鏡の前で服をきてポーズ取ってる人をみてはぁー、、、
酔っぱらってどんちゃん騒いでる人をみてはぁー、、、
畑から取れた芋を見て笑顔の人をみてはぁー、、、

はぁー、、、はぁー、、、はぁー、、、
それを見兼ねて
大神さまがうーん、うーん、うーん、、、

頭をポリポリかきながら
とうとう大神さまは一つ決めて
トンガリボーヤを一度だけ
落としてあげる事にした





一週間経って

約束の日
一つだけ神様と約束したトンガリボーヤは
仲間が作った塊に乗って降りる事になった



その約束とは
死んでしまうまで浮き上がれないから
法律を破ってまで落とすから
途中は何もすることが出来ないということでした。



それでもいいと満面の笑みでボーヤは
ゆっくりお辞儀をし
塊に乗ろうとしました。


少し申し訳なさそうな大神さま

降りて行く瞬間
神様は引き留めようかと
口を開きかけました

必死で止め
声にならなかった言葉
それは最後にどうしても言えなかった神さまの心残りでした




-]()¥&-()[:※「/」]¥&-()-





最後にその表情をみたとき
トンガリボーヤは不思議に思いました。


どうして
そんなに悲しそうなんだろう?



落ちていく塊を掴む手が
力を込める時最後の最後まで
友達も神さまも仲間たちも悲しい顔を見せている事が
脳裏から離れないのでした。





あ、




急降下し
降りて行く最中
塊はどんどん熱くなり
次第にじぶんの身体に伝染し
熱さを増していくのでした。



溶け始める手に掴んだ塊を
みて気づきました。




なんて事だ、、



自分の身体も溶け始めているのです。


そうです
息をすると塊になる
でもそれは身体が氷よりも冷えているから出来ている事で
自分の身体があるのも
あの冷たい世界にいたからなんだと


この時初めて気づいたのです。


慌てて
息を吐いても溶け始めた身体が熱くなる分
どんどん苦しくなるだけで
氷を作る事が出来ません




そういう事だったのか、、

全てを悟った反面
全てをボーヤは思い出しました。


「僕はだから塊に変えれたのか」



そうです。
ボーヤは空気中の水分から
大神さまが作り出した塊だったのです。




悲しくなり
そして元のようになれない事をくやみ
涙がダラダラ流れてきました。


どんどん溶けて行く身体
ボタボタ溢れていく
水分へと変わる塊

溶けて
もう、地面に着くというころ
意識でさえなくなってしまったトンガリボーヤは
最後に大神さまの声を聞きました。


ゴメンね














あぁ
もういいんですよ
気にしないで、、、












今日も雲の上では
せっせせっせと働く反面
ため息を溢すトンガリボーヤが背を丸くして
悲しみを込めて塊にします


いいなぁ、、

それだけ思いながら


自由詩 秘密のお話 Copyright 最都 優 2013-08-03 23:26:09
notebook Home 戻る