あんた誰?
壮佑


土曜日の午後
コーヒーショップに子象が入ろうとしたが
ドアに胴体がはさまって
そのまま動けなくなってしまった
店の外から象使いの少年と通行人が
しっぽを掴んでエイヤッと引っ張っている
店内からは客達と店のスタッフが
子象の頭を押しているがびくともしない
それでもウェイトレスが注文を聞くと
子象は「ぼくカフェ・オレ!」と答えた
やがて運ばれて来たカフェ・オレを
子象は長い鼻を使って口の中に流し込んだ
と思ったら胴体を荒っぽく引き抜いて
びっくりしているみんなを尻目に
大通りの向こうへ一目散に逃げて行く
「あ、こら、待てーっ!」と叫びながら
象使いの少年が後を追って走って行く
「お客さんお勘定!」と叫びながら
ウェイトレスも追いかけて行く
やがて彼らの姿は見えなくなり
後には大破したドアだけが残った
店内は平常状態に戻り
客達がなごやかに談笑している
さてしかし 私の見るところでは
この一部始終がどっかおかしいぞ
子象と少年がグルなのは言うまでもないが
通行人や客達の善意の協力者ぶりや
驚いた様子もすごくわざとらしかったし
実は少年とデキてるウェイトレスはもとより
他のスタッフだってなんか怪しいぞ
すべてが私をターゲットに
示し合わせた演技なのは明々白々
それならばこの街で この世界で
ただ一人こんなヤラセを見せられている
私ってば いったい誰なのかしら?
すると 大通りの向こうの
ボール紙製のビルディングをバリッと破って
子象がいぶかしげな顔を覗かせると
私に向かって叫んだ
そうよそれよ! あんた誰?




※文書グループ「コーヒーショップの物語」






自由詩 あんた誰? Copyright 壮佑 2013-07-23 20:42:11
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