ひとつの愛の死
ただのみきや

愛は心臓ではありません
ひと刺しくらいで死にません
悶え苦しみ血を流し
こと切れるまで幾日も
血が乾くまでに幾月も
断末魔のその姿
もとに戻るには幾年も


愛は蛙じゃありません
解剖なんてしないで下さい
何故? とふるえる唇に
静かに指をあてましょう
謎のままに喪布で包み
砂漠の真中に埋めましょう
決して墓標など建てないように


やがて幾星霜の向こう側
幻の湖が現れて
辺りを緑に変える頃
まるで生きているかのよう
美しいミイラを見つけます
まるで生きているかのよう
あの日の愛の在りのままを




自由詩 ひとつの愛の死 Copyright ただのみきや 2013-07-19 21:47:23
notebook Home 戻る