海辺の夜空に小さな灯かりがきらめいて
りゅうのあくび

ずいぶん遠くの砂浜には
朝方に打ち寄せる小さな流木が
たくさんありました。
きっと誰かの海辺の
記憶の果てにあるはずです。
どのぐらい時間をかけて
どこから来たのか
わかりません。

夏の陽射しは
その日の仕事を
終えてしまいました。
夕焼けになる時までには。
砂浜ではいくつもの流木が
すっかりと乾いていました。

夜空は地上をゆっくりと
深い紺色に染めていきました。
告白をする恋人たちは
二人だけで夜の潮騒を
聴きにやってきました。
それから小さな流木は
集められ燃やされました。
もう誰もいない夜の砂浜を
かすかに照らしながら。
とても小さくきらめいて
世界にひとつしかない灯火として。

すでに海岸線を縫うように
点された街灯は
明るくなっていました。
海の向こうからは
汽笛が鳴り
外国へとたくさんの便りを
運ぶ船の灯りが
水平線の近くを
優しく揺らいでいました。


自由詩 海辺の夜空に小さな灯かりがきらめいて Copyright りゅうのあくび 2013-07-14 18:16:39
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