後輩を見捨てた俺
和田カマリ

デモンストレーション用のワゴンカーを運転していた後輩から、切羽詰った感じで電話がかかって来た。
「先輩、この車、どこに止めたら良いんですか。」
他の仕事をしていたので、メンドクサいったらありゃしなかった。いい加減に、
「地下の駐車場にでも止めとけよ。」って言った。
それからしばらくして、
「先輩、助けて下さい。地下室の天上にワゴンのルーフがあたって、身動きが取れません。後続車が鬼のようにホーンを鳴らして怒っています。」
ちっめんどくせい。
「なんとかしろよ!前に進まないんだったらバックしろ。」
「はい。」
「あ〜あ、電灯が配管が崩れ落ちていく。タスケテタスケテ先輩。」

それから地下駐車場に言ってみると、そこは嫌な感じの修羅場になっていた。うちの会社からも総務課のお偉いさんがやってきていた。
「こんな車が地下の駐車場に入るわけネエだろうが。いったい誰の指示なんだよ?」
俺は保身のためにジット黙っていた。
後輩は責任を一人でかぶって、やがて営業部から消えていった。




自由詩 後輩を見捨てた俺 Copyright 和田カマリ 2013-07-09 18:08:01
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