キャベツ
一縷

妊娠が発覚してから
私は毎日キャベツばかり食べている
サクサクサク、とリズムよくキャベツを切っていると
必ず亡くなった祖母を思い出した
統合失調症を患っていた祖母は
財布から母が金を盗んだと喚き散らし
母が嫁いできたときに処女ではなかったと責め
自分の食事にだけ毒が盛られていると言っては暴れていた
そんなことがあるたびに、母は台所に立ち
丸々としたキャベツを千切りにするのだ
サクサクサクサク、抑揚のない旋律が
まな板に千切りキャベツの山を築く
私は毎日台所に立つ母の後ろ姿を思い出しながら
キャベツを切る
サクサクサクサク、人差し指を切った
芯に近い白いキャベツに赤い血が落ちる
じわじわと滲んでくる私の血は
祖母と母と、そしてお腹の子を繋いでいるだろう
私は汚れたキャベツをごみ箱に捨てた


自由詩 キャベツ Copyright 一縷 2013-07-08 16:17:22
notebook Home 戻る  過去 未来