詩人の孤独死
ただのみきや
何時の頃からか詩が化けている
病身の助けになればと書いてみた
介護詩は気味の悪い怪語詩に
看護詩はよく解らない漢語詩に
理学療法詩はまさかの自爆消防詩だ
イガ栗養蜂詩になりたいと打ち明けられた時
断固反対したのが祟ったようだ
このところ毎晩のように
枕元を走り回っているのは座敷わら詩
子供詩も放置しすぎるとこの始末だ
田園詩はもはや散り散りに
タニ詩や案山詩は姿を消し
嫁さが詩に後継者さが詩
個別保障廃詩や減反政策廃詩が幅を利かす
若い頃から書きためてきた
わかりやすい抒情詩たちはまさか化けはしまいと
高を括っていたのだが 甘かった
――オラオラオラオラオラ!
――無駄無駄無駄無駄無駄ァ!
全く困ったものだ
昔の恋人に捧げた愛の詩が あっイノシ詩!
今さら猪突猛進されてもたまらない
反戦詩に突然ラリアットをかまされた定型詩は
タオルを投げられTKO詩になってしまい
未詩たちは言葉遊びに夢中で呼んでも無詩するし
空想詩は性質の悪い騙詩や詐欺詩に姿を変え
滑稽詩も暗い顔のこけ詩になったらもう笑えない
その時ふと まだ一度も
官能詩を書いていないことに気がついた
(書いたら
やっぱり化けるのかな? )
考え始めると居ても立っても居られない
その夜わたしは官能詩を心に思いめぐらし
(裸にして腰の辺りに馬乗りにさせて……)
捏ね繰り回しながら眠りについた
翌朝 目が覚めると
それは冷たくなって死んでいた
腹上詩 そう題名だけを記した
まさしく墓碑銘を刻む行為だった
やがてわたしの病気は悪化詩て
寝たきりの日々を過ごすようになった
詩期が近いようだ
相変わらず詩たちは
枕元で騒ぎまくっている
生みの親が詩ぬのも全然平気な様子
む詩ろ嬉詩そうに笑っていやがる
も詩か詩てわた詩も
詩ぬと化けて詩に変わるのかも詩れない
わた詩の意詩や遺詩は関係なく
誰かの書いた一編の詩として
はた詩てどんな詩だろう
現代詩か
原罪詩か
毒吐くの
孤独詩か
詩め詩め
詩ろい神に架かれた
文字のつらなりが
詩ュルリレアリとお出ま詩だ
致詩方無詩
おも詩ろ可笑詩く
詩ぬ詩かないか