君の世界は終わらない
nonya


不規則に配置された
文字間から
いつも僕は
君の世界に忍び込んでいた

大雑把な地図しか
持っていないから
いつも僕は
君の世界の迷い人のひとりだった

草原の向こうから
手招きする君の言葉は
風になって
雲を描いたかと思うと
次の瞬間
言葉になって
僕の背筋をそよがせた

木立の上から
手招きする君の言葉は
光になって
水面を彩ったかと思うと
次の瞬間
言葉になって
僕の睫毛に降り注いだ

気がつくと
いつも僕は
君の世界のたぶん隅っこで
心地良く彷徨っていた
能天気に漂っていた

君がそこに居ても
君がそこに居なくても

君の世界の言葉は
微笑むことを止めない遠近法だから

君の世界の言葉は
鳴り止まない四分音符だから

僕はまた
お洒落な文字間から
こっそり忍び込んで
君の眼差しと吐息の軌道を
呆けたように
眺めてしまうのだろう

君の世界は
決して終わらないのだから




自由詩 君の世界は終わらない Copyright nonya 2013-06-29 09:48:06
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