余命
……とある蛙


さて また、あのすすり泣き
深夜不気味な静寂と
心の中を踏みにじる
遠吠えのような鳴き声と
嗚咽を漏らしたすすり泣き

寝静まった街の中
街路樹に風
   風だけがざわざわと
聞こえぬふりでも
   ざわざわと
風の言葉 風のざわめき
人の言葉 人のざわめき

寝静まった街外れ
葉に振り落ちる雨の音
 雨音だけがぱらぱらと
枝を軋ませ、風が鳴る
 風音だけがヒューヒューと
雨の言葉 風の口笛
眠れずじっと息潜む

寝静まりかえった家の中
寝息が独りふーふーと
 寝息だけがふーふーと
ことりともせず家の中
 寝返りだけの衣擦れが
無言の休息 孤独な就寝
そのうち雨も止んでいて

さて、また あのすすり泣き
深夜不気味な静寂と
心の中を震えさす
草笛のような鳴き声と
嗚咽を涸らしたすすり泣き

この先 朝まで続くのか
命の炎の揺らぐとき
大事な誰かが消えるとき


自由詩 余命 Copyright ……とある蛙 2013-06-26 11:01:24
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