とうきび
ただのみきや
トウキビの葉がゆれている
昨夜の雨に濡れたまま
まだ膝くらいの高さだが
すぐに背丈ほどにもなるだろう
トウキビはうまい だが
そんなに食べたいとは思わない
年に一度も食べられれば十分だ
何なら食べなくたって
むかし ばあちゃんの家で食べた
粒が黒ずんだトウキビは
線路脇の狭い畑に植えられていた
春のイチゴもそう 孫を喜ばせるために
いまのトウキビは
粒が大きくて色もきれいで
とてもあまい むかしの品種より
たぶんずっとうまいのだ
だがいつも思い出すのはあのトウキビだ
夏も終わりの 線香の匂い わたしを呼ぶ
声――東北なまりが残っていて
味などとっくに覚えてはいないが