とうきび
ただのみきや

トウキビの葉がゆれている
昨夜の雨に濡れたまま
まだ膝くらいの高さだが
すぐに背丈ほどにもなるだろう

トウキビはうまい だが
そんなに食べたいとは思わない
年に一度も食べられれば十分だ
何なら食べなくたって

むかし ばあちゃんの家で食べた
粒が黒ずんだトウキビは
線路脇の狭い畑に植えられていた
春のイチゴもそう 孫を喜ばせるために

いまのトウキビは
粒が大きくて色もきれいで
とてもあまい むかしの品種より
たぶんずっとうまいのだ

だがいつも思い出すのはあのトウキビだ
夏も終わりの 線香の匂い わたしを呼ぶ
声――東北なまりが残っていて
味などとっくに覚えてはいないが




自由詩 とうきび Copyright ただのみきや 2013-06-23 14:45:23
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