雪だるま
柳井 幸仁

 雪が降った。
 僕が住んでいる地域では珍しく、かなりの大雪だった。
 そんな雪が降り積もっていく風景を見て、年甲斐もなく外で遊びたくなってしまった。
 でも、さすがに年相応の羞恥心も持ち合わせているので、人がいない時間、夜中の三時になってから遊ぶために外に出た。
 外はとても静かだった。
 まさに、誰もいない世界。
 家の前の坂に、車が何台か止まっていた。
 雪が原因で動けなくなったのか、放置された数台の車。
 雪はこういう事をもたらすのだと、少し複雑な気分になった。
 それでも、気分を取り直して雪の上を歩いた。
 踏みしめるように歩くと、シャリシャリとした感覚か心地よい。
 凍った部分を滑るように歩くと、時々転びそうになったりもしたけど、とても楽しい。
 一緒に遊ぶ人がいないのが少しさみしいけど、それは仕方のない事だ。
 ただ、何となく寂しくなってしまって、思わず家の近くの公園に入った。
 公園に入ると、いくつかの雪だるまを見つけた。
 きっと、小さい子供が友達やお母さん、お父さんと作った雪だるま。
 その中に、一つだけ頭が乗っていない雪だるまがあった。
 何で乗っていないのだろうか。
 落ちた形跡はない、落された形跡もない。
 置いてあった頭を持ってみる。
 意外と重い物だった。
 もしかしたら、子供が一人で雪だるまを作っていたのだけど、重さのせいで頭を乗せられなくて、完成させられなかったのではないかと思った。
 実際、本当は何があったのかは分からないけど、もしかしたらと思うと、いてもたってもいられなくなった。
 僕は落ちていた頭を持ち上げると、雪だるまの胴体の上に乗せた。
 こんなことをして、何になるのかとも思ったけど、胴体が二つに分かれた雪だるまを完成させてやりたかったのだ。
 目も、鼻も、手も付いていない雪だるまだけど、丸い体に丸い頭が乗っている姿を見て、何となく幸せな気持ちになった。
 僕はその雪だるまを写真に撮った。
 きっとその写真を見て、僕は何度でもこの幸せな気持ちを思い出すのだろう。


自由詩 雪だるま Copyright 柳井 幸仁 2013-06-20 05:04:12
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