生きろなんて、言えない
まーつん

  蜘蛛の足が
  多すぎるからと言って
  面白半分に引きちぎる子供

  休みの日が
  長すぎるからと言って
  魚を釣り上げたあと
  血まみれの口から
  針を引き抜く釣り人

  餓えるのが嫌だからと
  家畜たちを並ばせて
  順番に殺していく私たち

  自分が夢を
  見れないからと
  我が子の夢に
  水を差す親御たち

  醜いからと
  物陰を這うゴキブリを
  水洗便所に流し

  美しいから
  標本にと
  野に舞う蝶を
  針で串刺しにし

  意に沿わぬ土地に
  連れたきた生物種を
  現地の生態系の
  バランスの為にと
  根絶やしにする私たち


  生きろなんて言えない


  命の本当の尊さを
  知りもせずに踏みにじる
  私たちに そんなこと言えない

  光を失った目を
  世界から遠ざけて
  死への旅路に
  踏み出そうとする子供に

  あなたはそれでも
  言えますか

  生きろと

  この背中を見て
  後に続けと

  先人たちの通った道を
  彼等の偉大な足跡を
  辿って歩けと
  言えますか

  僕は
  黙り込むしかない

  だがそれでも
  血に汚れた
  この手を伸ばし
  無垢な子供の
  肩を掴んで

  引き留めようと
  するだろう





  そっちへ行くな、と








自由詩 生きろなんて、言えない Copyright まーつん 2013-06-17 21:00:34
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