守護神
和田カマリ

家にはもう一人の大人がいて
毎日稼ぎに精を出していてくれる
家ではとかく影の薄いこの男だが
一歩外に出るとなかなかやり手らしく
この春、重役に昇進したらしい
自慢するわけでも、また隠すわけでもなく
毎日、淡々と仕事に励んでいるのだ

そして毎月25日前後にはお給料明細を
ビターンとテーブルに貼り付けて
責任感と優越感の混ざったような
良い顔で「どや!」って言う

僕はと言えば次の日の朝
銀行のディスペンサーの前で
嫁さんがたんまり引き出すのを
微笑ましく見つめているぐらいだ

子供たちや嫁さんはそれでも
不思議な事に僕を大事にしてくれる
風来坊みたいにただ・・・
うろうろしているだけの僕を
チーンと鐘の音で呼び寄せると
正座をして胸の前で手を合わせ
嬉しい事とか
悲しい事とか
お茶を入れてくれながら
心の底を惜しみなくさらけ出してくれる
なんだかむず痒いな

奴は家にいるとき、ほとんどうたた寝をしている
僕のそばでうたた寝をしている
僕達は良くおでこ同士でガツンとなる

「痛てて、お前あんまり無理するなよなあ。」
僕がそう言うと
「あなたの幸せを分けてもらったから。」
意味深な事を寝ぼけながら言う

お前のおかげで俺達親子
何不自由なく、暮して行ける
これからも身体に気をつけて
立派に働いてくれよ

ほんとお前って
守護神みたいな男だな


自由詩 守護神 Copyright 和田カマリ 2013-06-07 18:13:09
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