PostingTomatoReturnUnkwon
りゅうのあくび

例えば人間の孤独な想いが
採れたばかりの
一粒のトマトだったとして
トマトにも生き甲斐ってものがあるので
想いには必ず相手があるように
朝も夜もトマトを待つ方が
必ずいらっしゃるでしょう

想いを届けることとは
それは新鮮なトマトを
みずみずしいうちに届けることに似てはいるが
はっきり違うところがある

或るトマトには
或る未来完了形の
パーソナリティがあって宛先がある

届けるトマトはそれぞれが
大きさによっても
苗によっても違うが
思いの丈にもそれぞれ名前があるように
トマトは外見だけでも
しっかり判断されて
届ける相手が決まっている
そう運命のように決まっている

配達の途中では
差出人と宛先しか確認できない
場合が多いから
もちろん届けるトマトの味を
調べることは絶対できないだろう

暑い夏は訪れる
風が吹こうが雨が降ろうが
トマトの薄くて赤い表皮がしっかり守られて
届けられるのである

あなたのポストには
また明日もみずみずしいトマト
が届くはずだろう

最近のお宅は表札がありません
発送元に返されるトマトも後を絶ちませんし
誤って違うお宅にトマトが配達されることも
確実に減るでしょうし
だからできればお宅には
あなたの表札をつけて欲しい
一粒の小さいトマトもしっかり届くでしょう
せめて名字だけでもいいので


自由詩 PostingTomatoReturnUnkwon Copyright りゅうのあくび 2013-06-06 18:05:40
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