夜を溜める
塔野夏子

わたしはわたしの中に
夜を溜める
そしてその夜を醸してゆく
深くなるように
やわらかくなるように

わたしはわたしの身体に
花を鳥を
風を月を沁みこませる
わたしの中の夜が
やさしくなるように
豊かになるように

長い旅路の果てに
あなたがわたしのもとへ
辿り着いたならば
わたしはわたしの中の夜を
汲み出そう
そしてあなたに注ぎかけよう

あなたがこの上なく心地よい眠りを
心ゆくまで深々と眠れるように
此の世の傷を痛みをすべて忘れて

美しいかぎりの夢をみて
水晶の岸辺にうちあげられるような
しずかな目ざめを
迎えられるように





自由詩 夜を溜める Copyright 塔野夏子 2013-06-01 20:09:42
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