ちょうつがい
nonya


開いて
閉じて
開き直る

胸のちょうつがいを
ギシギシ言わせて
自分の扉を開け放つ

隅から隅までよく見てみやがれと
立ち塞がった戸口の後ろで
気弱な本体が震えている

閉じて
開いて
閉じ籠る

胸のちょうつがいを
キイキイ泣かせて
自分の扉をぴったり閉める

「どうせ自分なんか」と
これみよがしの張り紙をして
戸口のこちら側でじっと息を殺す

開いて
閉じて
半開き

世間を上手に渡っていく人は
上等なちょうつがいを
軋ませもせず
小粋な開き加減で
小狡い閉じ具合で
自分を豊かに表わしてみせるけれど

すぐに溺れかけしまう私は
出来損ないのちょうつがいさえ
持て余して
なかなか開けられずに
ぴったり閉めきれずに
自分の正体さえ危うくしてしまう

それでも
使い勝手の悪いちょうつがいに
何度も溜息をつきながら
これからも
誰かのために
自分のために
ぎこちなく扉を開け閉めするのだろう
開け閉めしなければならないのだろう

錆びついて
二度と動かなくなったちょうつがいが
蝶の形をした魂となって
空へ還るその時まで




自由詩 ちょうつがい Copyright nonya 2013-05-31 21:46:11
notebook Home 戻る  過去 未来